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村上春樹さん、私人ですか、公人ですか。 [高円寺]

IMG_0035.JPGニューヨークダウが380ポイント上げ、この流れを受けて日経平均も大幅上昇した。ニューヨークが上げた理由は、シティーの経営幹部が業績回復を示唆したからだ。一企業の動向がこれだけ株価を動かすのだから、マーケットというのは敏感といえば敏感だが、敏感すぎるといえば敏感すぎる。株価上昇の要因はもう一つある。それは、バーナンキFRB議長が時価会計の見直しについて言及したからだ。以前にも書いたが、アメリカ発世界不況の大きな要因の一つが時価会計制度だ。

時価会計と変動相場制を見直すべき、そう私は書いたが、最初のほうが現実的に動き始めたわけだ。時価会計が見直されるとどうなるのか。簡単に言えば、企業の決算がよくなる。例えば、1億円で買った不動産の時価が決算時に6千万円になったとすると、今の制度では差額の4千万円を損失計上しなければならない。もし、時価会計を行う必要がなくなれば、この評価減を損失計上する必要がなくなる。だから、その分だけ決算は良くなるわけだ(ただし、時価会計の見直し=廃止とは単純にはならないが)。

企業の経営状況がよくないから時価会計制度を見直すというのは本来、制度のあり方からすれば本末転倒なのかもしれない。しかしながら、企業が生きていく、ひいては国民が生きていくためには、たとえ一度決めた制度やルールであっても状況に応じて臨機応変、柔軟に対応することが肝心である。これはいい加減ということでは決してなく、いわば生活の知恵のようなものと整理すればよい。

さて、話は変わる。村上春樹さんがエルサレム賞を受賞し、現地に赴いて行った受賞スピーチが注目されたが、ガザ地区を攻撃して住民を多数殺害しているイスラエルが贈る賞は辞退すべきだという声がもともと一部にあって、帰国後、彼がこの声にどう対応するのか注目していたが、昨日発売された文藝春秋に「僕はなぜエルサレムに行ったのか」と題する彼の論文が掲載された。

エルサレムに行くことに悩み、そして今も自分の納得する整理ができていない、そんなふうに私は読んだ。村上ワールドを感じさせるところも少なくないが、文字がしっとりと紙に馴染んでいないと言うか、浮足立っている感じが全体にする。「自分の下した決断について、事前に弁明したり釈明したりするのは、もともとあまり好きじゃない」と村上さんは書いているが、なんとなく一生懸命弁明しているようにも思える。

いろいろ悩んだことは事実のようだ。でも最後は「小説家という資格で」エルサレムに行くことを決断した。エルサレム賞は、「エルサレム・ブックフェアに所属する賞であって、国家から招かれたわけでない」ので行くことにした、というようことも言っている。つまり、小説家というか、文学の世界でのお話だから、イスラエルが良いとか悪いとか、パレスチナがどうとかこうとか、そういう政治、宗教のこととは少し別のことだよね、だから僕は行くことにしたのさ、彼はそう言っているように私には聞こえた。

総理大臣が終戦記念日に靖国神社を参拝すると、取り巻きの記者が「公人としての参拝ですか、それとも、私人としての参拝ですか」と愚問を発する場面がよくあるが、村上さんの話はこれにちょっと似ていて、公人=小説家・村上春樹なら受賞しても構わない、私人=(肩書なし)村上春樹なら受賞を辞退する、そんな整理を村上さんはしたようにも思える。でも、村上さんは小説家であると同時に一社会人であるわけだから、小説家だからどうのこうのと言わずに、「村上春樹はこう思う」と正面から語ってもらいたかったと思う。

でもホッとしたことも私にはある。村上さんは天才であるが、でも、政治や宗教の問題のなかに自分自身が当事者として放り込まれてしまうと、いくら文学の天才といえども、狼狽して小説や随筆のようになかなか上手く語れない、彼とてスーパーマンではなかった、と思ったのだ。この論文について、村上春樹さんのファンの方からご意見を頂けると嬉しいです。


伝説のスタ丼屋、高円寺店が先日オープンした。今日とりあえず行って生姜丼(写真)を食べてみたが、生姜の味付けがゆるく、肉の量に比べてごはんが多すぎて、ごはんがかなり残ってしまった。伝説、少し大袈裟ではないかなー。

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