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歴史をかえた「聞く耳」の誤用。 [時事]

IMG_0042.JPG今から40年前、日本からアメリカへの繊維製品の輸出が急増し、日米貿易摩擦として問題になった。当時のアメリカ大統領ニクソンは日本の佐藤栄作総理に対し、自主的に繊維製品の輸出規制をするよう求め、これに対して佐藤総理は「善処します」と回答した。

この「善処します」という日本独特の表現が、その後の日米関係をギクシャクさせるキッカケになった。「慎重に検討します」くらいの気持ちで述べられた「善処します」という日本語は、I will take care of it.という英語に翻訳された。アメリカにとってこの翻訳された英語の意味するところは、何か具体的な対策を日本は取る、そういう積極的なニュアンスを持つものだった。

この話は、同時通訳者で立教大学教授の鳥飼玖美子さんが著した『歴史をかえた誤訳』という本に紹介されている。

誤訳というのは、日本語と英語というように、言語、文化が異なるときに起こるわけだが、コミュニケーションの当事者が同一言語を使っているにもかかわらず、一方が言葉の使い方を間違ったおかげで、誤訳ではなく「誤解」を生じさせる事態が昨日、日本で起きた。

ご存知のように鳩山首相は昨日、突然辞意を表明した。普天間、政治とカネ、この二つが辞任に至った大きな理由なのだそうだ。しかしながら、首相の説明の中で国民が一番違和感を持ったのは「国民は聞く耳を持たなくなった」という言葉だ。この言葉を聞いて私はすぐに「首相は使い方を間違ったな」と、思った。

日本で一番利用されているとされる新明解国語辞典によると、「聞く耳」の意味は「他の意見を素直に聞く謙虚な姿勢」とある。そうなると、「国民は聞く耳を持たなくなった」は「国民は他の意見を素直に聞く謙虚な姿勢を失った」と置き換えることができる。となると、首相が退陣するのはまるで国民のせい、そんな感じになってしまう。首相が意図したことは多分違うのだろうと思うけど、政治に限らず、この世の中、言葉は命、言葉は重いのだ。その言葉の重さを最後まで知らなかったが故に、鳩山首相は追い込まれた、私はそう思っている。

写真は、新宿の定点観測地点。もう御馴染みですね。


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